2015年御翼6月号その1

スペース・シャトル「チャレンジャー号」の爆発を警告していたクリスチャン技術者

 

 故シューラー牧師は、再臨のことは強調しなかった。再臨ばかり言っていると、人は地上で果たすべき使命をおろそかにしがちだからである。また、100年前まで、人の寿命がもっと短かった頃のキリスト教会のメッセージは、死ぬ準備をしなさい、で済んだ。それが、最先端の伝道の仕方であったが、人が長生きするようになった今は、もっと信仰で生きることを教えなければならない。 
夢を実現させるためには、次のことを心がけよう。
 ●自分に自信をもとう。 ●自分の知性を信じよう。
 ●自分の直感を信じよう。●自分の本能を信じよう。
 ただし、ここで「知性」と「教育」を混同しては困る。真の知性とは、潜在意識の中にあって可能性を前向きにさぐろうとする能力のことである。真の知性は普遍的な法則を理解し、それに対して創造的な方法で応える感性なのだ。一方、教育は単なる知識にすぎない。それ自身は大切なものだが、知恵の代わりにはならない。知恵とは、知識をうまく使いこなす能力なのだから。この意味では正規の教育は、確実な自己信頼をもつために必ずしも必要とは言えない。皮肉なことに、成功した人の多くは教育を受けていないという現実は、知識よりも行動が大事だということを証明している。

なによりも自分の「直感」を信じること
 鳥は誰に教わることもなく巣を作り、鮭は生まれた川に戻る。同じように人間もこの「内から呼ぶ声」、つまり本能にしたがってうまく生きている。この本能は直感の一部でもある。オーストリアの精神科医ビクトール・フランクル博士に、次のように尋ねてみたことがある。「直感とはいったい何なのですか?」「誰にもわからない」彼は正直に答えた。
  神の存在や力を無視して、直感あるいは本能を語るのは、あまりにも近視眼的で無責任だ。私の考えや行動のすべては、神の教えに導かれている、自分の本能は神の声だと、私は信じている。[イザヤ書 57・15 「わたしは、高く、聖なる所に住み/打ち砕かれて、へりくだる霊の人と共にあり…打ち砕かれた心の人に命を得させる。]
ロバート・シューラー『いかにして自分の夢を実現するか』(三笠書房)より

 一九八六年一月二八日、米国スペース・シャトルのチャレンジャー号が打ち上げから73秒後、空中で大爆発し、民間人の学校教師を含む7名の乗組員を乗せたまま粉々に青空に散った。事故原因は、ロケットの燃料タンクのつなぎ目を密閉させるためのゴム製の輪(O(オー)リング)が、気温が低いためにその機能を失い、燃料漏れを起こしたことだった。その危険性を事前の調査で確信していたクリスチャンの技術者ロジャー・ボアジョリー氏は、他の技術者三人と共に、何度も会社の上司にそのことを警告し、打ち上げの延期を提言したが、技術競争に勝ち残りたい会社はそれを却下する。そして、宇宙開発の政治的支持を得るために打ち上げを急ぐNASA(アメリカ航空宇宙局)も、会社の経営陣も安全を主張した。これにより、ボアジョリー氏と、同じく打ち上げを警告した経営陣のアラン・マクドナルド氏は会社を去り、打ち上げに反対したもう一人の技術者アーニー・トンプソン氏は会社に残ったが、社内で疎外された。
 ボアジョリー氏は職を失ってでも真実を主張する信仰厚いクリスチャンだった。彼は優秀な技術者であったが、NASAの実態を暴露し、事故原因を公にし、上司に恥をかかせるような者を雇う会社はなかった。ボアジョリー氏はその後、全米の大学に招かれ、工学部の学生らに職務上の倫理観の大切さと会社が担う責任について、自分の体験から講義した。この活動は大した収入にはならなかったが、その功績を称え、いくつかの賞が授けられた。その後も、「倫理観ある技術者」の主張を退け続けたNASAは、二〇〇三年にコロンビア号を大気圏再突入時に失い、現在NASAによる有人宇宙飛行は中断されたままになっている。米国はもはや宇宙開発の夢を見る国ではなくなったのだ。
 元会社役員のアラン・マクドナルド氏は、「自分が作っているスペース・シャトルに家族を乗せられるだろうか」という思いが与えられ、これは大事な感情だと受け止めた。彼は会社を去り、事故後はすべて真実を話し、証言者の中でも最重要人となった。一方、多くの関係者が去った会社に残ったアーニー・トンプソン氏は、Oリングの材質を改良し、それまで二重だったOリングを三重にする対策を施し、製品の信頼を回復した。会社は今、火星探査機用のロケット開発を担っている。

バックナンバーはこちら 御翼一覧  HOME